これで飯野、どうでも飯野。

毒親・女子校育ちの24歳。もうすぐ無職。麦酒を片手に好き勝手書きます。

ブナハーブン

見習いバーテンダーの日。

今夜は面白いお客さまがいらっしゃいました。男女の二人連れ。
女性の方はとても感じがよい方で、「こんなところにお店があるなんて知らなかったわ」と仰有り、終始にこやかに飲んでいかれました。帰りには、お友達を連れてまた来るわ、と。

さて、面白い、というのは、男性の方で。
お店にいらしたときには既に結構お飲みになってらしたようで、初めから話の調子が良いのです。そうして、最初は「銀座のバーで一杯ウン百万のお酒を~」だったのが、出てくる人名がどんどん有名人になり、Sから始まる携帯電話会社の社長や、Fから始まるSNSの創設者と飲み友達だとか……どんどん話が大きくなっていくんです。

いや、いいんですけど、本当なのかも知れませんけど、もしも本当なのでしたら、そういうことは隠されたほうがよろしいかと思いますけど……と思いながらにこにこ「へええ凄いですねえ」と相槌を打ちながら、隣の女性の表情を見ると、うんざりした様子もなく、うっとりして彼の話を聞いているのですわ。吃驚してグラス落としそうになりましたよ。え? まじで信じてるのこのひと? それとも演技? 演技だよね?

しかし、もし、ですよ、彼がまるきりの嘘つき男で、それをバーの店員が信じきって聞いている(ように見える)からという理由で彼女が彼を信じて、騙されてどうにかなってしまったらどうしよう。ここは思わず彼が怯んでしまうような一言を投げかけて、彼女の目を醒ましてさし上げたほうがよろしいのではないか、などと考えてしまいました。というのも、わたしの母親は、詐欺男に引っかかって結婚した挙句、それから十年以上にわたって詐欺男に家の財産を使いこまれて逃げられたからです。だから、そういう法螺吹き男を見るとどうにも怒りがこみ上げてくるわけですわ。
しかしきっと、わたしより彼女のほうが、男性のことをよくご存知でしょうし、目の前でお客様に恥をかかせるなんて言語道断ですし、もしかしたら全て本当のことなのかもしれませんし、ここはぐっと気持ちをおさえてにこにこ接客しておりました。

が、男性を店外のお手洗いにご案内するときに、その男め、わたしの身体を不躾にじろじろと見て、「おっぱいおっきいねえ」だの「何カップ?」だの、「うちで働かない?」だの、まあとやかくいろいろ仰有いまして。身体も寄せてこようとするので、わたしはすたすた歩いて避けました。そのときわたし思ったわ、こいつ絶対大法螺吹きよ!!!!
あのね、本当にきちんと社会を渡っている方、大きい物を動かしている方、高級なサービスを知っている方というのは、その「場」が何であるか知っているし、他人のことを軽んじたりしないの。わたしが出会ってきた方はそういうひとでした。
そういうことがしたいんならそういうところに行けっつうのよ。わかる? バーで身体を触ろうとするのも、キャバクラで執拗に交際を迫るのも、ヘルスで本番を強要するのも全部、履き違えてんのよ。ケチケチしないで、ちゃんと目的に合ったところに遊びに行ってね。

何も知らないおぼこい顔に見られますけど、ヘンなことされたら平手打ちすっから。ライターで髪の毛燃やしてあげるわ。それではね。