これで飯野、どうでも飯野。

毒親・女子校育ちの24歳。もうすぐ無職。麦酒を片手に好き勝手書きます。

祖父のこと

生きているのがつらくて、祖父の遺影を眺めた。
暗い部屋の中で、蝋燭の光によって金色に輝く仏壇の内側をじっと見た。祖父の喉仏はきちんと、釈迦の姿のままに飾られている。祖父の法名がある。未だ納骨していない骨壷がある。
わたしは、祖父が亡き後に、彼を殊更、神のように扱った。実際は佛だが。悩みがあると、手を合わせて呟いた。誰にも言えぬ過ちは、仏壇の前で懺悔した。
祖父はわたしのことを買い被っていた。彼にとっての孫は、わたしと妹だけだ。彼は周囲にも、できる孫だ、賢い孫だと自慢していたらしい。葬式でそれを知った。わたしは、実際、祖父の思うような人間ではなかった。勉強もそれほど出来なかった。

祖父は、わたしが大学に入学したら、萬年筆か腕時計を買ってやろうと言っていた。祖父は、萬年筆と腕時計、キャメラにはこだわりがあった。わたしは、彼の死後に凡てを揃えた。祖父の趣味とは違う物だろうけれど。祖父は、わたしに入学祝を渡す前に死んだ。高校三年の夏のことだ。死ぬ直前まで、予備校に行かなくてもいいのかと心配していた。わたしは、国公立の受験はしないことにして、併設校推薦を選んだことを話していなかった。怖かったのだ。実は出来ない人間なのだと話すことが怖かった。
祖父が死んだので、大学受験を避けたことを言えず仕舞いになり、それは後後までわたしを苦しめた。霊柩車を見ながらわたしは、せめて公務員になろうと決めた。祖父は、県庁職員で、税金関係の仕事をしていた。祖父は生前、わたしによく役所の仕事を薦めてきていた。その意を汲もうと思った。しかし四年後、しっかり落ちた。

今死んだら、祖父のもとへ行ける。
わたしは、誰より祖父を愛している。それはもう、確実にそうだ。祖父の妻より、娘より、もうひとりの孫より、確実にあなたを愛している。あなたがわたしを買い被っていたように、わたしもあなたを買い被っているのかもしれない。あなた、なんて言ったらきっと、儒教がどうのと説教されるな。しかしその声は聞こえない。悲しい。もっともっと教えて頂きたいことがあった。もっと叱られたかった。
今のわたしを見て、彼は何と言うのだろうか。願わくばそちらに、連れて行ってはくださいませんか。

仏壇の扉を閉める。寝よう。